後知恵バイアスとは?予想は当たらない?

心理学
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今回は、後知恵バイアスについて解説していきます。

後知恵バイアスとは?

後知恵バイアスとは、

「何か物事の結果を知った時に、それが事前に予測可能だったと考える傾向」

のことです。

結果が分かった後に、「やっぱり○○だと思ってた」とか、「実は、こうなると分かっていた」などと言い出す人は、後知恵バイアスの典型例です。

結果が分かる前には「○○かもしれない」と、頭の片隅で考えていただけのことでも、実際に結果を知った後には、「○○だと確信していた」と考えてしまいます。

逆に、後知恵バイアスが存在するため、私たちの予測は自分が思っているよりも外れていると考えられます。

後知恵バイアスの原因

このような後知恵バイアスはなぜ発生するのか?

これには、「利用可能性ヒューリスティック」が関係していると考えられています。

長い名前ですが、「利用可能性ヒューリスティック」とは、

人間は、最近起きた出来事や印象深かった出来事などを優先的に記憶するので、頭に思い浮かびやすいものや目立ちやすいものに強い影響を受ける

という意味です。

「結果」を知ると、それ以外の可能性は自然と思考から排除され、自分がその結果についてのみ考えていたと勘違いします。

実際は、結果が分かる前は様々な可能性を考えていた人でも、結果が分かると後知恵バイアスの影響を受けてしまいます。

影響を受けやすい人

後知恵バイアスは多くの人に起こりうるものですが、特にその傾向が強い人がいます。

それは、「自分は賢く、様々な事柄で他人よりも優れている」と考えている人です。
自信過剰の人や、プライドの高い人が当てはまります。

「自分は間違ったことは言わない(しない)」と思っている人は要注意です。
完全に完璧な人間は存在しないので、誰でも失敗することはあります。

本当に賢い人は、自分にもまだまだ知らないこと、他人より劣っている部分があるのを理解しているため、「私は大した人間ではない・・・」と、謙遜することがあるのです。

後知恵バイアスの実験

現在までに、後知恵バイアスを証明するための実験が何度も行われています。

ここでは、有名な例を紹介します。

1975年にアメリカの心理学者であるバルーフ・フィッシュホフ(Baruch Fischhoff)とラッシュ・ベイス(Ruth Beyth)の発表した研究があります。

この実験は、アメリカ大統領であるリチャード・ニクソンがモスクワと北京を訪問する際に取る行動を被験者に予想してもらうもので、実験の対象は、心理学を専攻する大学生でした。

  1. 「ニクソン大統領は、北京訪問時に毛沢東に会うだろう」
  2. 「ニクソン大統領はモスクワに訪問した際に、ユダヤ人のグループに話しかけられるだろう」

など、いくつかの予想に対して、これらの行動が起こる確率がどのくらいかを尋ねました。

被験者のうち、1の「ニクソン大統領は、北京訪問時に毛沢東に会うだろう」が実現するだろうと予想した人は約40%でした。

実際には、ニクソン大統領は北京訪問時に毛沢東に会うことができました。

しかし、実験はここで終わりではありません。

フィッシュホフとベイスは、ニクソン大統領の帰国後にもう一度同じ被験者を集め、実験を行いました。

実験では、前回と同じ質問が提示され、自分が質問に対してどのような予想をしたのかを思い出して答えてもらいました。

要するに、過去の自分がどのように予想したかを考えてもらったのです。

すると、自分が過去に1の予想が実現すると答えたと思う人は60%もいました。

つまり、ニクソン大統領の訪問前、1の予想が実現すると答えた人は40%だったので、約20%の被験者が「自分のした予想は正しいはず」と考え、記憶を修正してしまっていました。

この実験結果について、フィッシュホフとベイスは、

  • ニクソン大統領が毛沢東に会うことを知った人々に後知恵バイアスが働いた
  • そのため、あたかも最初からニクソン大統領と毛沢東が会うことを自分が予想していたかのように感じさせた


と述べています。

フィッシュホフとベイスの研究は、歴史的な事実を扱って後知恵バイアスを証明した研究として広く知られています。

後知恵バイアスの対策

後知恵バイアスの影響を減らすためには、どうすれば良いでしょうか。

知ること

まずは、認知バイアス全てに共通することですが、後知恵バイアスが存在することを理解するのが大切です。

知らなければ対策できません。

他の可能性を考える

そして、実際に何かが起こった時に、「そうだと思っていた」と言いそうになったら、一度立ち止まって、「他の可能性はないだろうか」と考えてみましょう。

また、他人が同じようなことを言っている場合は、「なぜそう思うのか」を聞いてみて下さい。

本当に事前に予測していたのなら、根拠があるはずですが、「何となくそう思ったから」という風にごまかしたら、後知恵バイアスにかかっている可能性が高いです。

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