今回は、行動経済学の理論である「プロスペクト理論」について解説していきます。
行動経済学とは?
その前に、行動経済学について少し解説しておきます。
※行動経済学・・・数学に重点を置いた従来の経済学に心理学を取り入れることで、より現実に即した理論を考察する研究のことです。
従来の経済学では、計算によって理論を構築するために、人間は「経済的合理性にのみ基づいて、個人主義的に行動するもの」と仮定されていました。
しかし、実際の人間は、常に合理的に生きているわけではないことが分かってきました。このままでは、経済学は正に「机上の空論」と言われてしまいます。
そこで、計算するだけでなく、実際に観察や実験をしたり、心理学や認知科学の知識を基にして研究したりすることで、実際の人間の行動に近いモデルを作ろうとするのが、「行動経済学」です。
プロスペクト理論とは?

プロスペクト理論・・・不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。
引用元:wikipedia
簡単に言うと、人間は意思決定する際に、利益を得ることよりも、損失を回避することを最優先に考えるという理論です。
プロスペクト理論を分かりやすく説明する有名なグラフがあります。(下のグラフは自作です)
グラフを見れば分かるように、利益が増えても喜びはそれほど増加しませんが、損失が少しでも増えると、悲しみは大幅に増加します。
だから、例えば、100万円の利益による喜びよりも、100万円の損失による悲しみの方がはるかに大きいのです。
プロスペクト理論の元となった実験
プロスペクト理論に関する有名な実験を紹介します。
以下の質問について、考えてみて下さい。
質問1:あなたは、2つの選択肢A、Bのうち、どちらを選びますか?
選択肢A:無条件で10万円をもらえる
選択肢B:コインを投げて、表が出たら20万円をもらえるが、裏が出たら一円ももらえない。
この質問には、多くの人がAと答えます。しかし、期待値はA、Bともに10万円です。なぜBを選ぶ人は少ないのでしょうか?
それは、Bの選択肢について、「20万円もらえる」ことよりも、「1円ももらえない」ということの方が、強く印象に残るからです。
質問2:あなたは、2つの選択肢A、Bのうち、どちらを選びますか?
選択肢A:無条件で10万円を失う
選択肢B:コインを投げて、表が出たら1円も払わないが、裏が出たら20万円払う。
この質問には、多くの人がBと答えます。しかし、期待値はA、Bともに-10万円です。なぜBを選ぶ人が多いのでしょうか?
それは、Bの選択肢について、「20万円払う」ことよりも、「1円も払わない」ということの方が、強く印象に残るからです。
質問1でAを選ぶ人は質問2でもAを選び、質問1でBを選ぶ人は質問2でもbを選びそうなものですが、実際は、質問1では多くの人がAを選び、質問2ではBを選ぶ人が多いのです。
だから、人は利益を得る時にはより確実な選択をしますが、損失が発生する際には、多少のリスクを負ってでも損失を回避しようとします。
関連した心理効果にコンコルド効果があります
コメント