スウェーデンは、他の北欧諸国と共に、男女平等の国として有名です。
実際に、世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数では、2006年以降、スウェーデンは常に上位5位に入っています。
世界銀行のデータベースによると、1990年~2019年における女性(15歳~64歳)の労働参加率は以下の通りです。
日本は、OECD平均と同様に、1990年から徐々に増加していますが、スウェーデンは1990年の時点で既に80%を超えていることが分かります。
しかし、スウェーデンも昔は結婚したら家庭で家事・育児に専念する専業主婦が多く、女性労働者は多くありませんでした。
スウェーデンが現在の社会になるまでには、政府の様々な政策が強く影響を与えてきました。
子供手当や育児休暇といった制度的な問題だけでなく、社会の理解を得るために様々な啓発活動も行われました。
啓発活動
スウェーデンでは、社会制度自体が女性の職場進出を前提に組み立てられているといっても過言ではありません。
女性も社会に出て男性と対等に働き、税金や年金、社会保険料を納めています。
逆に、専業主婦では、最低限の年金や医療サービスしか受けられないため、必然的に働かざるを得ない女性が多いのです。
第二次世界大戦後に急速な経済発展を遂げたスウェーデンでは、労働力不足を補うために、近隣・南欧諸国から移民を受け入れる一方で、洗剤労働力として家庭の主婦が注目され、その活用を図る手立てが進められました。
1960年代に入り、政府は主婦を賃金労働者にするための政策キャンペーンに乗り出し、社会の意識改革が積極的に進められました。
具体的には、主婦を啓発するためのラジオ番組が放送され、インスタント食品やTVディナー(※)を活用して主婦の負担軽減を図るべきこと、家電製品などの活用で生活の合理化を図ることなどが勧められました。
※TVディナー・・・TVを見ながら作れるディナー。オーブンや電子レンジで温めて食べる冷凍食品。
育児休暇制度
1974年には、世界で初めて男女両性が有給の育児休暇を取得できる制度が発足しました。
今日では、父親と母親はそれぞれ、育児休業中となる240日(合計480日)の間、「両親手当」と呼ばれる所得補償を受けとることができます。
390日間は、一定の上限はあるものの従前の所得の約80%が補償されます。
合計480日のうち、60日は父親および母親の固有の受給期間とされており、譲渡ができないことになっています。
父親も育児休暇を取得しなければ60日間の受給権を失う仕組みにして、男性の育児休暇取得を促しています。
共働きの夫婦が心配な問題の一つといえば、子供が突然病気にかかってしまうことです。
スウェーデンでは、子供が8か月から12歳になるまでの間、看病が必要になった場合、子供一人当たり年間最大120日間、看護休暇の休業補償(育児休暇と同様の金額)を社会保険庁から受け取れます。
税制度
スウェーデンには、地方税と国税の2種類の所得税があります。
ただし、国税である所得税が課税されるのは高所得者のみで、国民の多くは所得税を地方税として収めています。
これらの所得税は、かつては夫婦合算方式で課税されていましたが、給与所得を得る女性が増えるに従って、共働き世帯が税制上不利に働くことが問題となりました。
そこで、1971年に世帯単位から個人単位の課税方式(配偶者分離課税方式)に変更され、女性の社会進出が一層促されました。
そして1991年には、配偶者控除制度も廃止されて、被扶養者である専業主婦を念頭に置いた税制は存在しなくなりました。
その結果、働かない女性は最低限の社会保障給付しか受けられず、必然的に働くべき立場に追い込まれることとなりました。
他にも、住宅ローンを組もうとすると配偶者は連帯保証人的な位置づけと通常考えられるため、配偶者が扶養者と見なされる専業主婦の場合、ローンを組むための条件が厳しくなるという事情もあります。
参考
・Equal power and influence for women and men – that’s what Sweden is aiming for.
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