ニーチェのニヒリズムとは?ニヒリズムを克服する方法

哲学
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今回は、ニーチェの思想の中でも、ニヒリズムについて解説していきます。

ニヒリズムとは?

ニヒリズム(虚無主義)とは、伝統的な価値観や権威を全て否定し、破壊しようとする思想

「ニヒリズム」という言葉はツルゲーネフの小説『父と子』(1862)で、伝統的な宗教や道徳に反抗する無神論の人々をニヒリストと呼んだことから広まった。

ニーチェは「神の死」に伴って2000年間ヨーロッパを支配してきた伝統的な価値観や道徳観が崩壊し、ヨーロッパはデカダンス(頽廃(退廃))に陥っていると説いた。

ヨーロッパ文明とニヒリズム

ニーチェは、死後に出版された『力への意志』で、プラトン以来のヨーロッパの文明は、根本的にプラトン主義だと述べた。

プラトン以来のヨーロッパの哲学は、この現実の世界を超えたところに、超越的な価値(イデア・理想・理念)を設定し、地上のあらゆる事物はそれらの超越的な価値によってのみ初めて意味を与えられる単なる材料・物質とした。

デカルトやカントの哲学において、すべての理性に共通に備わるとされた生得観念や普遍的な直観の形式や思考の形式は、自然界・現象界を理性に都合のいいように加工する点で、プラトンのイデアと同様の働きをする。だから、デカルトやカントの哲学は、一種のプラトン主義である。

ニーチェによると、ヨーロッパ文明(科学技術)は、プラトン主義の教えるままに、理性の対象である超越的な価値(イデア)に基づいて「不自然に」形成されてきた。

しかし、超越的な価値というのは、道徳的価値判断の客観的な基準や知識の客観性を確保するために、人間の理性が仮定した理想にすぎず、本当に実在するものではない。

故に、本来存在しないもの(の実現)を目指して形成されたヨーロッパ文明の歴史は、その最初からニヒリズムの歴史である。

ニヒリズムは2種類存在する

ニーチェによれば、ニヒリズムにおいて私たちが取りうる態度は大きく分けて2つある。

・何も信じられない事態に絶望し、疲れきったため、その時々の状況に身を任せ、流れるように生きるという態度(消極的・受動的ニヒリズム)。


・すべてが無価値・偽り・仮象ということを前向きに考える生き方。つまり、自ら積極的に「仮象」を生み出し、一瞬一瞬を一所懸命生きるという態度積極的・能動的ニヒリズム)。

ニヒリズムの克服

ニーチェは、ニヒリズムを克服するには、ニヒリズムを徹底するしかないと考えている。

ニーチェによれば、ニヒリズムは、これまで現実世界に意味や形を与えてきた超越的価値(イデア)が無意味なものになったことに気づくときに始まる。

だからニヒリズムを克服するためには、存在しない超越的な価値を積極的に否定するしかない

超越的価値を、「存在しないもの」として徹底的に否定することにより、「ありのままの現実の世界」すなわち大地(自然)が、頼れるべき世界として立ち現れてくる。

ニーチェによれば、ニヒリズムの徹底は、超越的な価値を否定した後もなお存続する、この生命力に満ちた自然を再発見することであった。

真実の世界は、理性が作り上げた永遠不変のイデア界ではなく、やはり、この目の前に広がる現実の世界(大地・自然)であった。

超越的な価値を全て否定した後も残る大地という感性的世界(五感によって感知される世界)に立ち戻り、超越的な価値に代わる新たな価値(人生の目的・生きる意味など)を見出すことのできる者を超人と呼び、超人を目指すべきだとした。

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