世界の国歌について紹介します。
今回は、フィリピン共和国の国歌『最愛の地』を紹介します。
歌詞
Bayang Magiliw, Perlas ng Silanganan
Alab ng Puso sa dibdib mo’y buhay
Lupang Hinirang, Duyan ka ng magiting,
Sa manlulupig di ka pasisiil.
Sa dagat at bundok,
Sa simoy at sa langit mong bughaw,
May dilag ang tula
At awit sa paglayang minamahal.
Ang kislap ng watawat mo’y
Tagumpay na nagniningning;
Ang bituin at araw niya
Kailan pa ma’y di magdidilim.
Lupa ng araw, ng luwalhati’t pagsinta,
Buhay ay langit sa piling mo;
Aming ligaya na pag may mang-aapi
Ang mamatay nang dahil sa iyo.
歌詞の意味
最愛の国 東洋の真珠
心に燃える熱情
選ばれし国 勇者達が眠る地
いかなる征服者にも屈しない
海と山、青い空 詩の如く壮麗で
愛する自由への歌を奏でる
祖国の旗は勝利への輝き
決して遮られることのない星と太陽
栄光と愛情のある地
汝の腕に天地あり
もし汝を脅かす敵あれば
喜んで我が命を捧げよう
成り立ち
エミリオ・アグナルド将軍は、スペインからの独立を勝ち取るために革命軍を率いて戦闘を繰り返していました。
勝利が目前に迫った1898年6月5日、将軍は1週間後の12日に独立を宣言すると決意します。
そこで、軍楽隊の隊長であったジュリアン・フェリペを呼び出し、式典に間に合わせるように国歌を作れと命令しました。
国歌を作ることほど名誉なことはありませんが、フェリペに残された時間はわずか1週間だったため、彼は早速、フランスの国歌『ラ・マルセイエーズ』のように勇壮な行進曲を念頭に置き、『フィリピン行進曲』を一気に書き上げました。
式典を翌日に控えた夜、フェリペは将軍たちを前にしてピアノに向かうと、曲を披露しました。
これを聴き、感動したアグナルド将軍は、その場で『フィリピン行進曲』を国歌として採用することを決定しました。(『フィリピン行進曲』に歌詞はありませんでした。)
しかし、1898年12月、パリ条約により、フィリピンはスペインからアメリカに割譲されたため、スペインの支配を脱したフィリピンは、アメリカの植民地支配下に置かれることとなり、1899年には米比戦争(アメリカ=フィリピン戦争)が始まった。
23歳の軍人で、『ラ・インデペンデンシア』紙の編集者でもあったホセ・パルマは、(アメリカに対して)反抗的な『フィリピン人よ』というスペイン語の詩を『フィリピン行進曲』の楽譜と共に同紙に載せ、国民に広まりました。
米比戦争に勝利したアメリカ政府は国歌を歌うことを嫌がり、1920年代にはパルマのスペイン語の歌詞に英語やタガログ語(フィリピン語)の翻訳が加えられました。
1956年には、Surian ng Wikang Pambansa (Institute of National Language)が作成した新しい歌詞が採用されました。この歌詞は、現在、フィリピン全土で歌われている公式のフィリピン語の歌詞であり、ラジオ、テレビ、映画などを通じて広く普及しています。
※Surian ng Wikang Pambansa(INL:Institute of National Language)・・・フィリピンの国語(タガログ語)の発展を目指す最初の政府機関として1937年に設立された。その後、機関の名称や役割を多少変更しながらも、現在でも同様の政府機関が存在している。
題名について
フィリピン国歌の題名「Lupang Hinirang」の本来の意味は、英語で“Chosen Land”(選ばれた地)ですが、ホセ・パルマの書いた詩が歌詞のもとになっており、その詩の最初の1文が愛された土地だったので、「最愛の地」と訳されることが多いです。
国家の熱唱が義務
2017年、フィリピン下院で、全国民に国歌を「熱心に」歌うよう義務付ける法案が可決され、違反した者には1000~2000ドル(約11万~22万円)の罰金や、最大1年の禁錮刑を科すことも定められています。
熱心さが足りないと判断する基準は明記されていません。
法案はこのほか、(1)全ての公立、私立学校の生徒は国歌を覚えること(2)原曲に忠実に、楽器だけの場合は4分の2拍子、歌う場合は4分の4拍子、1分間に100~120拍のテンポで演奏すること(3)全員起立し、国旗に注目すること。国旗がなければ楽団と指揮者に注目すること(4)国歌を侮辱する行為は違反とみなすこと(5)宗教上の理由で国歌を歌えない者は十分な敬意を払い、気を付けの姿勢を取ること――などを定めています。
参考
・世界の国歌・国旗 単行本 – 2020/3/27 弓狩 匡純 (著)
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