世界の国歌について紹介します。
今回は、ニュージーランドの国歌『神よ ニュージーランドを守り給え』を紹介します。
歌詞
Māori version(先住民のマオリ族の言語)
1.
E Ihowā Atua,
O ngā iwi mātou rā
Āta whakarangona;
Me aroha noa
Kia hua ko te pai;
Kia tau tō atawhai;
Manaakitia mai
Aotearoa
2.
Ōna mano tāngata
Kiri whero, kiri mā,
Iwi Māori, Pākehā,
Rūpeke katoa,
Nei ka tono ko ngā hē
Māu e whakaahu kē,
Kia ora mārire
Aotearoa
3.
Tōna mana kia tū!
Tōna kaha kia ū;
Tōna rongo hei pakū
Ki te ao katoa
Aua rawa ngā whawhai
Ngā tutū e tata mai;
Kia tupu nui ai
Aotearoa
4.
Waiho tona takiwā
Ko te ao mārama;
Kia whiti tōna rā
Taiāwhio noa.
Ko te hae me te ngangau
Meinga kia kore kau;
Waiho i te rongo mau
Aotearoa
5.
Tōna pai me toitū
Tika rawa, pono pū;
Tōna noho, tāna tū;
Iwi nō Ihowā.
Kaua mōna whakamā;
Kia hau te ingoa;
Kia tū hei tauira;
Aotearoa
English version
1.
God of Nations at Thy feet,
In the bonds of love we meet,
Hear our voices, we entreat,
God defend our free land.
Guard Pacific’s triple star
From the shafts of strife and war,
Make her praises heard afar,
God defend New Zealand.
2.
Men of every creed and race,
Gather here before Thy face,
Asking Thee to bless this place,
God defend our free land.
From dissension, envy, hate,
And corruption guard our state,
Make our country good and great,
God defend New Zealand.
3.
Peace, not war, shall be our boast,
But, should foes assail our coast,
Make us then a mighty host,
God defend our free land.
Lord of battles in Thy might,
Put our enemies to flight,
Let our cause be just and right,
God defend New Zealand.
4.
Let our love for Thee increase,
May Thy blessings never cease,
Give us plenty, give us peace,
God defend our free land.
From dishonour and from shame,
Guard our country’s spotless name,
Crown her with immortal fame,
God defend New Zealand.
5.
May our mountains ever be
Freedom’s ramparts on the sea,
Make us faithful unto Thee,
God defend our free land.
Guide her in the nations’ van,
Preaching love and truth to man,
Working out Thy glorious plan,
God defend New Zealand.
歌詞の意味
(マオリ語版)
1.
おお 主よ 我和の国 我らの神々よ
我らの声を聞き入れ給え
我らを慈しみ給え
我らを反映させ給え
神々の祝福を賜り
ニュージーランドを守り給え
(英語版)
1.
国々の神は汝の御許に、
愛の絆の中で我々は出会う、
我々の願いを聞き入れ給え、
神よ、我々の自由な土地を守り給え。
太平洋の三つの星を守り給え(※)
争いと戦争の矢から、
主への賛美を遠くまで響かせよう。
神よ、ニュージーランドを守り給え。
2.
あらゆる信条と人種の人たちが
汝の顔の前のここに集い、
この地を祝福することを汝に願い、
神よ、我々の自由な土地を守り給え。
不和、妬み、憎しみ、
腐敗から我々の国を守り給え。
我らの国を良い国、偉大な国にし給え。
神よ、ニュージーランドを守り給え。
3.
戦争ではなく、平和が我々の誇りである
しかし、敵が我々の海岸を攻撃する場合は
我々を強大な軍勢にしてください。
神よ、この自由な国を守り給え。
戦いの主よ、汝の力で
我々の敵を逃がし給え、
我々の大義を正当にし給え。
神よ、ニュージーランドを守り給え。
4.
我々の汝への愛を高め給え。
汝の祝福が絶えることなくありますように。
我らに豊かさと平和を与え給え。
神よ、我々の自由な土地を守り給え。
不名誉と恥辱から
祖国の汚れなき名を守り給え。
不朽の名声を冠し給え。
神よ、ニュージーランドを守り給え。
5.
我々の山々が常に
海に浮かぶ自由の防壁でありますように。
我らを汝に忠実にし給え。
神よ、我々の自由の国を守り給え。
彼女を国歌の指導者に導き給え。
人間に愛と真実を説き、
汝の輝かしい計画を実行する。
神よ、ニュージーランドを守り給え。
太平洋の三つの星・・・作詞者のブラッケンは詳細なメモを残していないため、その意味は定かではありませんが、ニュージーランドの3つの主要な島、ノース、サウス、スチュワート諸島を指しているという説が有力です。
成り立ち
ニュージーランドは、2つの国歌を持っています。
1つは英国の国歌である『女王陛下万歳』。ニュージーランドが1840年から約70年間にわたり英国領であったことに由来しています。
もう1つは『神よ ニュージーランドを守り給え』です。先住民族のマオリ族の言葉にも訳されていて、マオリ語では『アオテアロア』(Aotearoa)
歌詞は、1870年代前半に新聞社が主催したコンテストによって選ばれたトーマス・ブラッケンの作品です。
アイルランドからの移民であったブラッケンは編集者で、政治家としても活躍しました。
曲は、オタゴ出身で当時27歳だった学校教師ジョン・ジョセフ・ウッズが手掛けた作品で、これもコンテストで選ばれ、1876年のクリスマスに初めて公式の場で演奏されました。
『神よ ニュージーランドを守り給え』の人気は19世紀中に高まり、20世紀に入ってからは最も人気のある讃美歌の一つとなった。
1935年から39年まで郵便局のチーフエンジニアを務め、ブラッケンの作品を賞賛していたジョン・マクダーモットを中心に、多くの人々の努力により、『神よ ニュージーランドを守り給え』は1940年の100周年記念式典に合わせてニュージーランドの国歌となりました。
初演から約100年後の1976年、G・H・ラッタ氏らがで組織した『神よ ニュージーランドを守り給え』をニュージーランドの国歌にすることを求める請願書は、7750人の署名とともに議会の請願委員会に提出されました。
エリザベス2世女王陛下の許可を得て、政府は『神よ ニュージーランドを守り給え』を『女王陛下万歳』と同等の国歌としてニュージーランドで採用しました。
現在は、先住民族への敬意から。1番マオリ語、2番英語の順番で歌います。
マオリ語の歌詞の方が英語版に比べてシンプルになっています。
WhakarongonaかWhakarangonaか?(マオリ語の文法)
マオリ語版の1番の歌詞には、「whakarangona」という言葉が登場します。
T. H. Smithによる翻訳の原版では、「聞く」という意味で「whakarongona」ではなく「whakarangona」という言葉が使われていました。
ウィリアムズ辞書によると、「rongo」の受動態は、rangonaでもrongonaでも良いそうです。
マオリの歴史的な新聞を集めたオンラインデータベース「Niupepa: Māori newspapers」を検索すると、「rangona」の検索結果1153件に対し、「rongona」の検索結果は187件でした。
また、「whakarangona」の検索結果179件に対し、「whakarongona」の検索結果は33件となっています。
その他の索引でも、「whakarangona」が「whakarongona」よりも多く使われていることが分かりました。
このことから、歴史的には「rongona」よりも「rangona」の使用が一般的に好まれていたことがわかります。
つまり、スミスが「whakarangona」を使うのは適切なことだったのです。
「whakarongona」の使用は、1940年に「God Defend New Zealand」が国民讃歌として初めて出版された際に、マオリ語のテキストに持ち込まれた数多くの誤りの一つでした。
これらの誤りは、1979年に公報に掲載された際にも引き継がれました。
参考
・世界の国歌・国旗 単行本 – 2020/3/27 弓狩 匡純 (著)
・CD付 オリンピックでよく見るよく聴く国旗と国歌 単行本 – 2019/9/26 吹浦 忠正 (著), 新藤 昌子 (著)
・Ministry for culture and heritage God Defend New Zealand/Aotearoa
・Ministry for culture and heritage History of God Defend New Zealand
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