世界の国歌について紹介します。
今回は、デンマーク王国の国歌『麗しき国』(Der er et Yndigt Land)『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』を紹介します。(”Kong Christian stod ved højen Mast)
歌詞
『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』
1.
Kong Christjan stoed ved høien Mast,
I Røg og Damp.
Hans Værge hamrede saa fast,
At Gothens Hielm og Hierne brast.
Da sank hvert fiendtligt Speil og Mast
I Røg og Damp.
Flye, skreg de, flye, hvad flygte kan!
Hvo staaer for Danmarks Christian
I Kamp?
2.
Niels Juel gav Agt paa Stormens Brag.
Nu er det Tid.
Han heysede det røde Flag,
Og slog paa Fienden Slag i Slag.
Da skreg de høit blant Stormens Brag:
Nu er det Tid.
Flye, skreg de, hver, som veed et Skiul!
Hvo kan bestaae for Danmarks Juel
I Strid?
3.
O Nordhav, Glimt af Vessel brød
Din mørke Skye.
Da tyede Kiemper til dit Skiød;
Thi med ham lynte Skrek og Død.
Fra Vallen hørtes Vraal, som brød
Den tykke Skye.
Fra Danmark lyner Tordenskiold;
Hver give sig i Himlens Vold,
Og flye!
4.
Du Danskes Vei til Roes og Magt,
Sortladne Hav!
Modtag din Ven, som uforsagt,
Tør møde Faren med Foragt,
Saa stolt, som du, mod Stormens Magt,
Sortladne Hav!
Og rask igennem larm og spil
og kamp og sejr før mig til
og kamp og sejr før mig til
min grav!
『麗しき国』
1.
Der er et yndigt Land,
Det staaer med brede Bøge
Nær salten Østerstrand;
Det bugter sig i Bakke, Dal,
Det hedder gamle Danmark,
Og det er Freias Sal.
2.
Der sad i fordums Tid
De harniskklædte Kæmper,
Udhvilede fra Strid;
Saa drog de frem til Fienders Meen,
Nu hvile deres Bene
Bag Høiens Bautasteen.
3.
Det Land endnu er skiønt,
Thi blaa sig Søen belter,
Og Løvet staaer saa grønt;
Og ædle Qvinder, skiønne Møer,
Og Mænd og raske Svende
Beboe de Danskes Øer.
4.
Vort Sprog er stærkt og blødt,
Vor Tro er reen og luttret
Og Modet er ei dødt.
Og hver en Dansk er lige fri,
Hver lyder tro sin Konge,
Men Trældom er forbi.
5.
Et venligt Syd i Nord
Er, grønne Danarige,
Din axbeklædte Jord.
Og Snekken gaaer sin stolte Vei.
Hvor Ploug og Kiølen furer,
Der svigter Haabet ei.
6.
Vort Dannebrog er smukt,
Det vifter hen ad Havet
Med Flagets røde Bugt.
Og stedse har sin Farve hvid
Dit hellige Kors i Blodet,
O Dannebrog, i Strid.
7.
Karsk er den Danskes Aand,
Den hader Fordoms Lænker,
Og Sværmeriets Baand.
For Venskab aaben, kold for Spot,
Slaaer ærlig Jydes Hierte,
For Pige, Land og Drot.
8.
Jeg bytter Danmark ei,
For Ruslands Vinterørkner,
For Sydens Blomstermai.
Ei Pest og Slanger kiende vi,
Ei Vesterlandets Tungsind,
Ei Østens Raseri.
9.
Vor Tid ei staaer i Dunst,
Den hævet har sin Stemme
For Videnskab og Kunst.
Ei Bragis og ei Mimers Raab
Har vakt i lige Strækning
Et bedre Fremtids Haab.
10.
Ei stor, vor Fødestavn,
Dog hæver sig blandt Stæder
Dit stolte Kiøbenhavn.
Til bedre By ei Havet kom,
Ja ingen Flod i Dalen,
Fra Trondhiem og til Rom.
11.
Med hellig Varetægt
Bevare du, Alfader!
Vor gamle Kongeslægt.
Kong Fredrik ligner Fredegod;
Hvor er en bedre Fyrste,
Af bedre Helteblod?
12.(4)
Hil Drot og Fædreland!
Hil hver en Danneborger,
Som virker hvad han kan.
Vort gamle Danmark skal bestaae,
Saalænge Bøgen speiler
Sin Top i Bølgen blaa.
歌詞の意味
『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』
1
クリスチャン王は高い帆柱の傍に立ち
霧と煙の中
彼の剣は非常に速く
スウェーデン人の兜と頭脳を破壊した。
そして、敵の全ての船尾と帆柱を沈めた。
霧と煙の中で。
“逃げろ!”と彼らは叫んだ、”逃げられる者は逃げろ!
デンマークのクリスチャンの勇者よ。
その戦いは?”
2
ニールス・ユエルは大嵐の轟音に耳を傾けた。(※)
「今がその時だ!」と。
彼は血のように赤い旗をもう一度掲げた。(※)
敵を徹底的に叩きのめした。
そして、嵐の轟音の中、大声で叫んだ。
“今がその時だ!”
“逃げろ!”と彼らは叫んた。”避難所に逃げろ!”
誰がデンマークのユエルに逆らうことができるか
その争い?”
3
北の海よ、ウェッセルの片鱗が見える(※)
汝の濁った空を!
その時、汝の戦闘に闘士が派遣された。
恐怖と死が彼の行く先を睨み付けていた。
戦場からは、咆哮が聞こえた。
濁った空を引き裂いた。
デンマークからはトルデンスキーオールドの雷が鳴り響く。(※)
各々の魂を天に捧げよう。
各々の魂を天に捧げよう。
そして飛べ!
4
名声と力へのデンマーク人の道!
黒海!
逃げることを恐れている汝の友人を迎えよう。
困難に立ち向かう。
誇りを持って嵐の力に立ち向かおう。
黒海!
そして、喜びと不安の中で。
戦争と勝利は汝の武器である。
私の墓場!
※分かりにくい言葉の意味(横に※が付いています。)
- ニールス・ユエル(1629-1697):デンマークの海軍士官。スカン戦争(1675-79年)ではデンマーク艦隊を指揮し、1676年にはスウェーデンからゴットランド島を奪還することに成功した。ユエルの最大の功績は、1677年のコーゲ湾の戦いで優勢なスウェーデン軍に勝利したことである。この勝利により、デンマークはスカン戦争以降、海軍の完全な優位性を獲得し、ユエルは国際的な名声を得た。
- 赤い旗:戦闘命令を示す旗。
- ピーター・ウェッセル・トルデンスキーオールド(Peter Wessel Tordenskiold)(1690-1720):デンマーク・ノルウェー艦隊の海軍英雄。デンマークが1700年と1709年から1720年の2回にわたって参加した大北戦争にも参加した。とりわけ、スウェーデンの狭いフィヨルド、ダイネキレンでの非常に危険な行動で知られている。彼は約30隻のスウェーデンの輸送船団を捕獲または破壊し、スウェーデン王と彼のノルウェー攻撃の意図に一石を投じた。
『麗しき国』
1.
麗しき国がある
ブナの木が誇らしげに枝を広げる
磯の香り満つバルト海の岸辺に
丘や谷に風が吹き降り
古の祖先らはデンマークと名付けた
女神フレイアの住まうこの地
2.
鎧を纏った英雄たちは
戦いの合間 ここで身を休めた
そしてまた行軍する
彼らは永遠の眠りについている
小さな丘に建つ 石柱の下で
3.
その国はやはり麗しい
海の波はとても青く、さざめいているから。
木々の葉が青々としていて
高貴な女性、美しい乙女たち
男たちや元気な白馬たちも
デンマークの島々に住む
12.(4)
王と祖国に万歳!
すべてのデンマーク人に万歳
自分のできることをしている者に万歳!
我らが古のデンマークは永遠に続くであろう
ブナの木が青い波に
その頂を映す限り
4.
私たちの言葉は強くて柔軟だ。
私たちの信仰は純粋で
そして、勇気は死んでいない。
すべてのデンマーク人は自由である。
それぞれが自分の王に従う。
しかし、隷属は終わった。
5.
北部にある親しみやすい南部
それは、緑のダナリゲ。(※)
汝は地球を軸にして
そして、スネッケンは誇り高き道を歩む。(※)
鋤と砂利の溝があるところ。
希望のない失敗
6.
デンマークの国旗は美しい。
海に沿って波打つ
旗の赤いリボンで
そしてその色は常に白
汝の聖なる十字架を血で
戦いの中のデンマークの旗。
7.
カースクはデンマーク人の精神です。(※)
それは、偏見の鎖を憎む。
誹謗中傷の連鎖を憎む。
友情に開放的で、嘲笑に冷たい。
誠実なジュート人の心を打つ。(※)
女性のため、国のため、王のため。
8.
私はデンマークを交換しない、
ロシアの冬の砂漠や、
南部の花と引き換えに。
疫病と蛇、
西洋の愚かさと
東洋の激しさを象徴していた。
9.
私たちの時間は霞んでいます。
それは声を上げている。
科学と芸術のために
ブラギとミーミルの叫びのあたりで(※)
直線的な伸びを喚起する
より良い未来への希望への。
10.
私たちが生まれ育った土地には、素晴らしいものがあります。
しかし、都市の中で高くそびえる
誇り高きコペンハーゲン
海の中より良い街を求めて
そう、谷には川がないのだ。
トロンハイムから、そしてローマへ。(※)
11.
聖なる守護で
すべての父祖よ、汝をお守りください。
私たちの古い王朝。
フレデリック王はフレデゴッド王に似ている(※)
英雄の血を引く優れた王子はどこにいる?
(翻訳が正確でない可能性があります。)
※分かりにくい言葉の意味(横に※が付いています。)
- カースク:スウェーデン発祥で、北欧を中心に人気のカクテル。
- ジュート人:ゲルマン民族の大移動の時代に、北方系のデーン人の到来により圧迫されブリテン島に移住した。
- ダナリゲ:デンマークの詩的な名前として使われています。ダナの王国とダナの庭。
- スネッケン:帆船、ヨット。
- ブラギ:北欧神話において、雄弁と詩の神。
- ミーミル:北欧神話で、知恵の井戸を守る巨人。
- トロンハイム:ノルウェー王国最初の首都。
- フレデリック王:フレデリック6世(1768年生まれ、1808-1839年国王)。
- フレデゴッド:デンマークの伝説的な王。伝説によれば、彼の治世は平和だったという。
成り立ち
デンマーク王国には、2つの国歌があります。
1つは、王室の歌として用いられる『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』です。ヨーロッパで最も古い王家と言われるデンマーク王室は、国民から深く愛されています。
もう一つは、一般に使われている『麗しき国』という国家で、オリンピックなどの国際試合では、『麗しき国』が演奏されます。
クリスチャン王とは、17世紀後半に国民の尊敬を集めたクリスチャン4世のことで、『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』は通称『王の歌』とも呼ばれています。
1780年に上演されたバレエ『漁夫』の楽曲としてヨハネス・エヴァルトが作詞し、ヨハン・エハンスト・ハートマンがデンマーク民謡のメロディーを取り入れて作曲しました。
後に、ピアノの練習局として知られる『ソナチネ』の作曲者であるフリードリッヒ・クーラオがオペラ曲にアレンジしたのが現在の国歌です。
ヨハネス・エヴァルト・・・彼の人生は型破りで、彼の書くものは複雑怪奇であった。彼のほとばしるような感情の描写は、ロマン主義の時代を先取りしたものであり、彼の言語的ダイナミクス、主観性への関心は、19世紀のロマン主義の作家たちなどにインスピレーションを与えました。
※歌劇『漁夫』・・・5人の漁師が遭難した英国船の乗組員を救おうとした救助活動にヒントを得て作られた
エヴァルトは啓蒙主義者であり、彼の『王の歌』では、統一的で絶対的な王が語られているのに対し、『麗しき国』では、国民国家が語られています。
『麗しき国』の歌詞は、北欧で最高の詩人とされているアダム・オーレンシュラーガーが書いた詩が基になっています。
これに、作曲家のハンス・エルンスト・クロイヤーが曲を付け、1844年に発表されました。
『麗しき国』の詩は、古代ローマの詩人ホラティウスの言葉「Ille terrarum mihi præter omnes Angulus ridet」(This corner of the earth pleases me more than any other)(この場所はどこよりも私を喜ばせる)と共に掲載されました。
原曲は12小節から成りますが、現在では4小節のみが国歌として採用されています。(原曲の12小節目が現在の国歌では4小節目になっています。つまり、原曲の1,2,3,12小節が現在の国歌です)
参考
・世界の国歌・国旗 単行本 – 2020/3/27 弓狩 匡純 (著)
・CD付 オリンピックでよく見るよく聴く国旗と国歌 単行本 – 2019/9/26 吹浦 忠正 (著), 新藤 昌子 (著)
・オーフス大学文化社会学部 歴史古典学科 ”Kong Christian stod ved højen Mast” af Johannes Ewald, 1779
・オーフス大学文化社会学部 歴史古典学科 ”Der er et Yndigt Land” af Adam Oehlenschläger, 1819
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