世界の国歌について紹介します。
今回は、スイス連邦の国歌『スイス賛歌』を紹介します。
歌詞
ドイツ語版の歌詞です。
Erste Strophe(1番)
Trittst im Morgenrot daher,
Seh’ich dich im Strahlenmeer,
Dich, du Hocherhabener, Herrlicher!
Wenn der Alpenfirn sich rötet,
Betet, freie Schweizer, betet!
Eure fromme Seele ahnt
Eure fromme Seele ahnt
Gott im hehren Vaterland,
Gott, den Herrn, im hehren Vaterland.
Zweite Strophe(2番)
Kommst im Abendglühn daher,
Find’ich dich im Sternenheer,
Dich, du Menschenfreundlicher, Liebender!
In des Himmels lichten Räumen
Kann ich froh und selig träumen!
Denn die fromme Seele ahnt
Denn die fromme Seele ahnt
Gott im hehren Vaterland,
Gott, den Herrn, im hehren Vaterland.
Dritte Strophe(3番)
Ziehst im Nebelflor daher,
Such’ich dich im Wolkenmeer,
Dich, du Unergründlicher, Ewiger!
Aus dem grauen Luftgebilde
Tritt die Sonne klar und milde,
Und die fromme Seele ahnt
Und die fromme Seele ahnt
Gott im hehren Vaterland,
Gott, den Herrn, im hehren Vaterland.
Vierte Strophe(4番)
Fährst im wilden Sturm daher,
Bist du selbst uns Hort und Wehr,
Du, allmächtig Waltender, Rettender!
In Gewitternacht und Grauen
Lasst uns kindlich ihm vertrauen!
Ja, die fromme Seele ahnt,
Ja, die fromme Seele ahnt,
Gott im hehren Vaterland,
Gott, den Herrn, im hehren Vaterland.
歌詞の意味
1.
汝は夜明けにやって来る。
光の海の中に汝が見える。
汝は、我が主、輝ける者よ!
高山のもみじが赤くなる頃。
祈れ、自由なスイス人よ、祈れ!
汝の敬虔な魂は知っている。
汝の敬虔な魂を知っている。
崇高な祖国に神あれ
神よ、主よ、高貴な祖国で。
2.
夕方の輝きに
私は星々の中であなたを見つける。
汝、人に優しく、親愛なる者よ。
天国の明るい空間で
楽しく至福の夢を見ることができる。
敬虔な魂は知っている。
敬虔な魂が知っている。
神は崇高な祖国に。
神、主は崇高な祖国に。
3.
霧の中を進み、
雲海の中で汝を探し求める。
汝は、計り知れない、永遠の存在!
灰色の空気の中で
澄んだ太陽が穏やかに顔を出す。
敬虔な魂は知っている。
敬虔な魂を知っている。
崇高な祖国の神よ!
神よ、主よ、高貴な祖国の中の神よ!
4.
荒れ狂う嵐の中、
汝は我ら保護し、守る。
汝、全能の救世主よ。
嵐の夜と恐怖の中で
子供のように彼を信頼しよう。
そう、敬虔な魂は知っている。
そう、敬虔な魂は知っている。
崇高な祖国に神を!
崇高な祖国の主である神を!
(翻訳が正確でない可能性があります。)
成り立ち
詩人のレオンハルド・ウィトマーから「自作の詩に曲を付けてほしい」という手紙を受け取った音楽家のアルベリーク・ツウィシッヒは、修道院で音楽監督を務めていた当時に作曲した讃美歌『我、主を慕う』に、ウィトマーの詩を乗せて、『スイス賛歌』を製作しました。
最初は、たった4名の住民を前に演奏したと言われていますが、1843年に合唱フェスティバルの演目に選ばれたことから広く知られるようになりました。
当時のスイスでは、国家的行事には『呼び求めよ、我が祖国』という英国の『女王陛下万歳』と同じ旋律が用いられた楽曲が使われていましたが、『スイス賛歌』を国歌にしようという運動が行われていました。
連邦政府は、長年国歌の変更を拒否していましたが、1961年に仮の国歌になり、1975年になって、スイス固有の国歌を持つ必要性に迫られて、政府がアンケートを行った結果、1981年になってようやく正式な国歌として制定されました。
ドイツとオーストリアでは、L.という言葉は主に各連邦州の歌に使われていますが、スイスでは正式に国歌を指しています。
国歌に加えて、数多くの地方、地域、カントン(州)の歌がありますが、これらは公式な地位を持っていません。
スイスの多言語主義
スイスは多言語国家であり、ドイツ語、イタリア語、フランス語、ロマンシュ語が公用語となっています。
1848年の連邦憲法で「三大言語」であるドイツ語、フランス語、イタリア語を「連邦の国語」と定め、1938年にロマンシュ語が「国民の言語」のリストに加えられました。
現在でも連邦憲法では、国語と連邦の公用語を区別しており、ロマンシュ語は限られた範囲でしか公用語とみなされていません。
多言語のスイスという指針は、言語多数派と言語少数派が平等の原則に基づいて協力することに基づいており、19世紀と20世紀になって誕生したものです。
原則として4つの言語圏では1つの言語のみが公用語とされているため、スイス人でも4つの言語を習得している人は非常に少ないようです。(観光地などでは、公用語2つ+英語が話せる人は多い。)
歌詞変更の可能性
社会的、政治的に重要な組織であるスイス公益団体(SGG)は、2014年に新しいスイス国歌を作るための公募を行いました。
2015年、審査委員会は、チューリヒ出身のヴェルナー・ヴィドマー氏の歌詞が採用されたこと公表し、歌詞は4つの公用語に翻訳されました。
スイス公益団体は、歌詞が広く国民に受け入れられた段階で、この新しい国歌の公式承認を管轄官庁に提案する予定です。
新しい国歌の歌詞
Weisses Kreuz auf rotem Grund,
unser Zeichen für den Bund:
Freiheit, Unabhängigkeit, Frieden.
Offen für die Welt, in der wir leben,
lasst uns[nbsp]nach Gerechtigkeit streben!
Frei, wer seine Freiheit nützt,
stark ein Volk, das Schwache stützt.
Weisses Kreuz auf rotem Grund,
unser Zeichen für den Schweizer Bund.
和訳(英語版を基に翻訳しました)
輝く赤に白い十字架。
共通の糸で織られている。
自由、独立、平等。
連帯感を持って世界に開かれている。
スイス人は平和と多様性の中で一つである。
自由に語る私たちは自由である。
弱いものを守る私たちは強い。
輝く赤に白い十字架。
スイスの象徴、我々が歩んできた道。
(翻訳が正確でない可能性があります。)
スイスの国歌が歌われたり演奏されたりするときには、スイスの国旗が見られることが多いので、新しい歌詞はスイス国旗のイメージで始まり、終わります。
自由は、連邦憲法の前文に2回登場する唯一の価値観であり、多くのスイス人にとって中心的な価値観です。
連邦憲法では、自由と独立は完璧で孤立した価値観ではなく、「世界に対する連帯と開放」と結びついています。
人権としての自由は、常に人間の義務としての責任と結びついています。
社会的弱者に対する責任、環境に対する責任、そして次世代に対する責任です。
歌詞の中心には「正義」という概念があり、この言葉は、文字通り、前文のフランス語訳にのみ登場します。
前文や憲法全体は、究極的には公正な社会の基礎を記述するものです。
正義とは、新しい讃美歌の中心となる概念です。
参考
・世界の国歌・国旗 単行本 – 2020/3/27 弓狩 匡純 (著)
・Der Bundesrat Das Portal der Schweizer Regierung Schweizer Landeshymne (Schweizerpsalm)
・Das Historische Lexikon der Schweiz(スイスの歴史用語集)Mehrsprachigkeit
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