台湾の概要

歴史
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近年、日本と台湾は正式な国交を樹立していないものの、民間での交流は盛んに行われており、お互いの好感度も高い。

しかし、台湾では日本や日本語について学ぶ機会が多いのに対し、日本では台湾のことを詳しく知る人は少ない。

そこで、今回は台湾の概要について紹介します。

台湾の概要

名称

日本では「台湾」という名称が一般的ですが、これには由来があります。

中国大陸から漢人が台湾へ移入し始めた16世紀後半ごろ、現在の台南あたりにシラヤ人という原住民が住んでいました。

彼らは、外来者や客人を「タイアン」や「ターヤン」と呼んだそうで、これを聞いた漢人は「大員」「台員」「大湾」とし、日本人は「大苑」「大冤」という漢字を当て、オランダ人は「Taioan」「Tayouan」と書き、その土地の名前にしました。

台湾という名前はこのあたりに由来するそうです。

それから約400年が経過し、現在、台湾は国際社会において台湾や中華民国だけでなく、Chinese Taipei(中華台北)やTPKM(台澎金馬個別関税領域)という名前を持っています。

首都

台北市の台湾総統府

台湾の首都は台北である。

しかし、台湾(中華民国)の首都は現在でも南京ではないかという議論がある。
中華民国憲法では、公式な首都は南京とされ、台北は「臨時首都」とされている。

※日本の首都(東京)も、日本国憲法や法律等で規定されていない。

以前は中華民国の国定教科書でも、南京が首都と記載されていたが、2003年版教科書からは台北を首都とする記述が登場した。

更に、2016年に当時の総統である馬英九前総統が母校の台湾大学で行った講義の中で、「(中華民国の首都は)ここ、台北だ」と発言している。

統治領域と自然

台湾の面積は約3万6000㎢です。離島や沖縄を除いた九州の面積が約36780㎢であるので、だいたい同じ大きさです。

上の画像を見れば分かりますが、台湾は日本列島とフィリピンの間にあります。

台湾島は火山島であり、各地に温泉が散在し、全島面積の約半分は森林に覆われた山地が締め、縦に五つの山脈が走る。

中央山脈には、最高峰の玉山(標高3952メートル)があり、日本統治時代には富士山よりも高いことから新高山と呼ばれていました。

中央山脈から北へ淡水河、西へ濁水渓、南へ高屏渓という主な河川が流れています。

気候

台湾は北回帰線を挟んで北部が亜熱帯、南部が熱帯に属します。

夏は5月から9月まで続いて温度と湿度がともに高く、冬は温暖で12月から2月までと短く、高山でのみ雪が降ります。

台湾島は偏西風と貿易風(東寄りの風)の境界線にあり、夏から秋には台風が頻繁に通過します。

年間の平均降雨量は2000ミリメートル前後であるものの、降り方は地域によって大きく異なり、中南部では雨季と乾季がはっきりと分かれて雨が夏に集中するのに対し、北部では一年通して雨が降ります。

台北、台中、台南と東京の気候を比較しました。(1991年~2020年までの30年平均)

平均気温(℃)台北台中台南東京
1月16.61717.85.4
2月17.217.718.96.1
3月1920.121.69.4
4月22.523.524.914.3
5月25.826.427.518.8
6月28.328.128.921.9
7月30.128.929.425.7
8月29.728.428.926.9
9月27.827.828.623.3
10月24.725.526.318
11月2222.623.412.5
12月18.218.719.67.7
平均23.523.724.715.8

最高気温(℃)台北台中台南東京
1月19.622.322.99.8
2月20.722.92410.9
3月22.925.226.514.2
4月26.728.129.319.4
5月30.130.731.423.6
6月32.932.332.426.1
7月3533.333.129.9
8月34.432.732.631.3
9月31.632.232.527.5
10月27.830.330.822
11月24.927.628.116.7
12月21.123.924.412
平均27.328.52920.3

最低気温(℃)台北台中台南東京
1月14.413.414.51.2
2月14.714.215.52.1
3月16.216.4185
4月19.420.121.79.8
5月22.823.124.714.6
6月25.324.926.318.5
7月26.825.526.722.4
8月26.625.326.323.5
9月25.224.62620.3
10月22.622.223.314.8
11月19.81920.38.8
12月16.115.116.33.8
平均20.820.321.612.1

台湾は、1年を通して気温が高いです。

降水量(mm)台北台中台南東京
1月93.836.620.959.7
2月129.46323.756.5
3月157.886.931.1116
4月151.4126.869.1133.7
5月245.2249.6160.1139.7
6月354.6329369.5167.8
7月214.2303.3353.5156.2
8月336.5340.8478.9154.7
9月336.8147.5167.6224.9
10月162.62524.6234.8
11月89.323.826.996.3
12月96.930.515.657.9
合計2,368.501762.81,741.501598.2

台中、台南は雨季と乾季がはっきりとわかれていますが、台北は1年中一定量の降水があります。

人口、人口密度

台湾の人口は、約2353万人(2021年3月)であり、在留邦人は24820人(2018年)となっています。

地域別に見ると、人口が多い方から新北市の約403万人、台中市の約282万人、高雄市の約276万人、台北市の約260万人、桃園市の約227万人、台南市の約187万人、彰化県の約126万人となっており、後は100万人未満の市、県です。

台湾全体の人口密度は約653(人/㎢)であり、人口が1000万人以上の国では世界2位である。

首都である台北は面積が約271.8㎢で、人口密度は約9565(人/㎢)であり、東京都の人口密度が約6367(人/㎢)であることから、人口密度の高さが分かる。

民族構成

台湾の住民構成を表す用語として1990年以降使われるようになったのが、「四大族群」という言い方です。

「族群」とは中国語で「民族集団」の意味を持ち、ここで言う「四大」とは、原住民族、福佬人、客家人、外省人の四つを指します。

原住民族・・・漢人が移住し来る以前から台湾に住んでいたオーストロネシア諸語を母語とする民族の総体であり、政府によって現在16の民族が原住民族として認定されている。全体の人口は55万人ほどで、台湾全体の約2%を占める。

福佬人・・・福建省南部から17~18世紀頃台湾に移住してきた人たち。福建省南部のことを閩南と呼んでいたが、漢字に虫が入っていることから嫌われ、近年では福佬と呼ばれることが多い。人口の7割程度を占めている。

客家人・・・広東省東北部や福建省西部から17~18世紀頃に台湾に移住してきた人たち。人口の10数%ほどであり、漢人の中では少数派。

外省人・・・中国共産党との国共内戦に敗れた国民党政府が台湾へ撤退したのに伴って移住してきた人々。
日本統治期以前から台湾に住んでいた人は本省人と呼ばれる。(原住民族・福佬人・客家人は本省人)

※上のグラフは正確ではなく、言語に基づく概算によるものです。

上のグラフを見ると、人口の98%は漢人であるように思える。

しかし、病理学・血液学の専門家である林媽利という医師が行った調査によると、「台湾人(本省人)の85%が原住民の血統に属する」とのことです。

台湾人のおよそ7割は漢人よりもマレー・ポリネシア系のDNAが主である。

この理由としては、清代(17~18世紀頃)に台湾へ移住した人たちは家族の帯同を許されなかったため、男性ばかりが台湾へ渡ったことにある。

台湾へ渡った男性の一部は原住民女性と結婚して子供を残し、その子供(漢人と原住民のハーフ)も原住民の女性と結婚して子供を残し、その子供も原住民の女性と・・・というのを繰り返すことで、漢人の血は16分の1や32分の1になるため、ほとんど原住民のDNAを持っていると言えるのだ。

台湾の先住民族について知りたい方はこちら

言語

台湾には、様々な民族が暮らしているため、言語も複数存在する。

最も多く存在する福佬人の言語である福佬語は、台湾に住む大多数の漢人が使う言葉であるから、日本統治時代に日本人によって「台湾語」と命名されている。

また、福佬語以外にも、台湾には客家人が母語とする客家語、原住民族の諸語があり、外省人は中国各地の言語を母語としていたものの、世代交代と通婚によって台湾華語(台湾で話される中国語)が母語と見なされている。

文字

中国語と言えば漢字ですが、漢字には主に繁体字と簡体字の2種類が存在します。

中華人民共和国やシンガポールでは簡体字が使用され、台湾や香港、その他の世界各地の中華街では繁体字が使用されています。

繁体字は日本で明治時代以降使用されてきた旧字体と似ているが、一部異なる。一方で、現在の日本で使われている漢字と簡体字は大きく異なる。

宗教

台湾には、多種多様な宗教が存在する。

2017年時点で、台湾には大きく分けて22種類の宗教があり、それ以外の宗教は「その他」に分類されています。 22の主要な宗教は、以下の通りです。

1. 世界の宗教:仏教、道教、ユダヤ教、カトリック、プロテスタント、イスラーム、東方正教会

2.中国または台湾を起源とし、創建年代が50年以上確認できる宗教:三一教(夏教)、在理教、一貫道、先天救教(世界紅卍字會)、天德聖教、軒轅教、天道。

3.創立が50年以上前であることが証明でき、世界中の宗教から派生したもの:末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)、天理教、バハイ教、統一協会、サイエントロジー、世界真光文明教団

台湾で一定規模の発展を遂げた宗教:天帝教、弥勒大道。

政治体制

台湾の政治体制は孫文の三民主義に基づく民主共和制であり、総統が元首です。

行政、立法、司法、考試、監察の五権分立に基づいて、それらの上に総統、副総統、総統府が存在します。

行政院は内閣であり、日本の省庁に相当する機関や委員会があります。地方自治体行政院の管轄下です。

立法院は一院制の国会であり、立法委員(国会議員)の定数は113名(選挙区から73名、山地と平地の原住民からそれぞれ3名ずつ、比例代表および海外華僑から34名)です。

司法は、日本と同じ三級三審制を採ります。

考試院は科挙の伝統を踏まえての官吏登用を、監察院は官吏に対する監督や視察を行います。

総統が五権を束ねるという政治体制は、半大統領制だと理解されています。

総統(元首)

中国語において総統とは日本語の大統領と同義の言葉であり、日本の内閣総理大臣よりも強い権限を持っている。(台湾は半大統領制と言われるので、大統領制と議院内閣制の中間ぐらい)

1947年に中華民国憲法が公布、施行された後の歴代総統を簡単に紹介します。

※青色が中国国民党、緑色が民主進歩党

蔣介石

蔣介石・・・第一代~第五代総統(1948~1975年)。1949年に戒厳令を布き、総統の権限を強化したことで、実質的には総統による強権政治だった。

厳家淦

厳家淦・・・第五大総統(1975~1978年)。1975年に総統だった蔣介石が病死したため、中華民国憲法の規定に沿い副総統だった厳家淦が総統に就任。

蔣経国

蔣経国・・・第六代~第七代総統(1978~1988年)。初代総統である蔣介石の息子であり、民衆の弾圧を行ったが、晩年には自由化、民主化を推し進めた。

李登輝

李登輝・・・第七代~第九代総統(1988~2000年)。蔣経国が任期中に病死したため、憲法の規定により副総統だった李登輝が総統に就任。本省人として初の総統であり、憲法改正や総統の直接選挙など、民主的な改革を推し進めた。

陳水扁

陳水扁・・・第十代~第十一代総統(2000~2008年)。初めて民主進歩党から選出された。民主化や正式名称の変更(中華⇒台湾)などを推し進めたが、様々なスキャンダルにより支持率が急落した。

馬英九

馬英九・・・第十二代~第十三代総統(2008~2016年)。インフラ整備や台中関係の改善により経済成長を果たした一方で、日本に対しては尖閣諸島や日本統治時代に関して批判していた。

蔡英文

蔡英文・・・第十四代~第十五代総統(2016年~現職)。初の女性総統であり、原住民族の末裔である。台湾は既に独立国家であるので独立宣言は必要ないという「天然独」の考えを持つ。民主進歩党の党首として初めて訪日した。

台湾の現代史について知りたい方はこちら

GDP

台湾のGDPは6,050億米ドル(2019年、台湾行政院主計處)であり、世界で21位です。

一人あたりのGDPは26,528米ドル(2019年、台湾行政院主計処)であり、31位となっています。

主要産業

戦後初期は農業が中心であり、輸出総額における農産品の割合は90%を超えていたが、工業が発展した現在では、1~2%程度しかない。

現在の台湾の主力産業は電子・電気、化学品、鉄鋼金属、機械などです。

特に、半導体製造業では世界のトップを走っており、世界シェア1位と2位の会社(両方台湾の会社)で世界のICチップの6割以上を生産している。

外交関係

中華民国(台湾)は1971年に国連への参加資格を喪失して以降、諸外国との国交を相次いで失い、2020年の時点で、以下の15か国と公式の外交関係を持つ。これらの国々は全て、中華民国を唯一合法の中国として認めているため、中華人民共和国とは国交を持たない。

大洋州(4か国)・・・ツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、ナウル共和国

欧州(1か国)・・・バチカン

中南米・カリブ(9か国)・・・グアテマラ、パラグアイ、ホンジュラス、ハイチ、ベリーズ、セントビンセント、セントクリストファー・ネーヴィス、ニカラグア、セントルシア

アフリカ(1か国)・・・エスワティニ

日本との関係

日本は中華人民共和国と正式な国交を結んで以来、中華民国(台湾)との正式な国交はなく、実務関係のみを維持している。

故に、互いに大使館や領事館を設置せず、台湾側は亜東関係協会を、日本側は公益財団法人交流協会をそれぞれ設置している。

2019年の日本からの訪台者数は約217万人(台湾交通部観光局)であり、台湾からの訪日者数は約489万人(JNTO)です。

台湾の人口が日本の5分の1ほどであることを考えると、日本を訪れる台湾人が如何に多いかが分かります。

日本統治時代の台湾について知りたい方はこちら

参考

・台湾を知るための60章(エリア・スタディーズ147)
赤松 美和子 (著, 編集), 若松 大祐 (著, 編集)

外務省 台湾の基礎データ

交通部中央気象局(台湾のwebサイト)

気象庁 平年値(年・月ごとの値)

公益財団法人 日本台湾交流協会

中華民国総統府 憲法制定後、歴代の総統と副総統

全国宗教情報ネットワーク

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