日本人は宗教を信仰しているのか

歴史
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現代の日本では、特定の宗教を信仰している人は少ないと思いますが、一方で、クリスマスや正月、お盆休みや寺での葬式、お墓など、宗教に関する行事は数多く存在します。

そこで、今回は日本人の宗教について解説します。

宗教に関する調査

2020年(令和2年)文化庁の宗教統計調査によると、神道系は約8900万人、仏教系は約8500万人、キリスト教系は200万人、諸教は約740万人で、合計約1億8000万人となっています。

人口を大きく上回っているのは、調査方法が原因です。

宗教法人、宗教団体を回答者として、自己申告での調査なので、複数の宗教の信者となっている人が多く存在することになります。

上のデータだけ見ると、日本人の多くは神道か仏教を信仰しているように思えます。

一方で、宗教法人に対してではなく、国民に対するアンケート調査では、異なる結果が見えてきます。

2018年にNHKが国際比較調査グループISSPの一員として実施した調査によると、「信仰している宗教はない」と答えた人が最多で62%だった。

2008年の調査でも、「信仰している宗教はない」が61%で最多だった他、あまり大きな変化はない。

しかし、この調査にも問題はある。

調査相手は18歳以上の2400人であり、調査有効数は1466人で(61.1%)。

NHKが意図して偏った調査をしていないとしても、これだけの人数では全体像と乖離している可能性があるため、全面的に信用することはできないが、ある程度の参考にはなると思う。

但し書きとして「冠婚葬祭の時だけの宗教でなく、あくまで、あなたご自身が、ふだん信仰している宗教をお答えください」と加えているため、「信仰している宗教なし」が多くなったと考えられる。

日本人は無宗教なのか?

上記の調査でも示されているように、日本人の大半は無宗教だと思っている人は少なくない。

しかし、クリスマスや葬式、教会での結婚式、墓参りなどの宗教行事に加えて、「八百万の神々」という考えを多くの人が持っています。

一方で、仏教や神道、キリスト教やイスラム教など、特定の宗教を信仰している人は少ない。

この意識の差については、「創唱宗教」と「自然宗教」の違いが大きく関係している。

そうしょうしゅうきょう 【創唱宗教】
一人の創唱者によって創始された宗教。自然発生的宗教に対していう。釈迦による仏教、マハーヴィーラによるジャイナ教、孔子による儒教、ゾロアスターによるゾロアスター教、イエスによるキリスト教、マニによるマニ教、マホメットによるイスラム教などが、その代表的なもの。

引用元:世界宗教用語辞典

世界に存在する代表的な宗教のほとんどは、この創唱宗教であり、創唱者を教祖として崇める幸福の科学のような新興宗教にも創唱宗教があります。

しぜん‐しゅうきょう【自然宗教】
1 自然発生的に展開した宗教。アニミズム・呪物(じゅぶつ)崇拝・自然崇拝などで、未開宗教・原始宗教といわれるもの。
2 神の恩恵に基づく啓示宗教に対して、人間の本性である理性に基づく宗教。理神論などの類。

引用元:デジタル大辞泉

日本の「八百万の神」に代表される宗教は1の意味での自然宗教です。

海外では、「アニミズム」(animism)という名前で知られており、「原始宗教」として原始的な未開社会のものと考えられています。(近年は変化しているかもしれないが)

しかし、現代の日本人は(日本人だけではないですが)「宗教」と言うと「創唱宗教」のことだと考える人が多いため、「自分は無宗教だ」と思っている人が多いようです。

だから、「自然宗教」も宗教だと考えると、日本人の大半は無宗教ではありません。

仏教か神道か

日本において、いわゆる「自然宗教」と呼ばれるものは、「原始神道」(古神道)が由来と考えられています。

明治時代以降の国家神道とは異なります。

原始神道は、自然崇拝・精霊崇拝などのアニミズムに加えて、先祖崇拝や常世と現世の概念などが含まれます。

原始神道は、『古事記』や『日本書紀』が書かれた8世紀よりはるか昔の縄文時代から弥生時代には広まっていたと考えられています。

一方、仏教は5世紀~6世紀ごろに日本に伝来したとされるが、当初から仏は、蕃神(となりのくにのかみ)として日本の神と同質の存在として認識され、神仏習合によって仏教が神道と混ざっている。

江戸時代の寺請制度や檀家制度などによって、仏教は祖先崇拝や冠婚葬祭との関係が深くなり、以降は「葬式仏教」と呼ばれることもある。

故に、現代日本における様々な宗教行事に関しては、神道と仏教の両方の影響を強く受けていると考えられている。

キリスト教や他の宗教

キリスト教は、16世紀にイエズス会のフランシスコ・ザビエルなどの宣教師によって日本に布教されたという説が一般的である。

その後、勢力を拡大したキリスト教が神道や仏教を迫害したり、ポルトガルの商人が日本人を奴隷として海外に人身売買しているということから、豊臣秀吉がキリスト教の布教を禁止した。

江戸から明治にかけても、自由な布教が行われなかったり、キリスト教が禁止されていたりして、完全にキリスト教の信仰が自由になったのは第二次世界大戦後である。

故に、キリスト教が現代の日本文化にはほとんど見られないのは、当然のことである。

しかし、クリスマスや教会での結婚式、キリスト教系の学校への進学など、日本人の生活の中にキリスト教は存在している。

これに関しては、現代の仏教が「葬式仏教」と言われるのと同様に、生活の一部として定着しただけであり、キリスト教の教義を知っている人や、教会に通う人は少ない。

また、主に戦後に拡大した新興宗教に関しては、有名な創価学会や幸福の科学は仏教系であるし、神道系やキリスト教系など、既存の宗教をもとにしたものが多い。

また、日本の文化に定着しているものとして、儒教がある。

もちろん、本来の儒教と全く同じではないが、年上の人物に対して敬語を使うのは、「長幼の序」の影響が強く、礼儀を重んじるのも儒教の影響と言えるだろう。

まとめ

上記で述べたように、日本人は様々な宗教の影響を受けていることが分かる。

それでも多くの日本人が「自分は無宗教だ」と考えるのは、それらの宗教が生活に定着しているからだと思われる。

「宗教の信仰」と言うと、日本では(海外も同様かもしれないが)「一般的な生活とは異なる行動をする」というイメージがあります。

例えば、仏教徒なら毎日お経を読んだり、キリスト教徒なら毎週教会に通ったりなど、生活に変化があるはずだと考えています。

しかし、日本に存在する宗教行事というのは、生まれた時から多くの日本人が行っている当たり前のものが多く、特に「宗教行事である」と意識していない人が多いのではないでしょうか。

クリスマスや教会での結婚式、葬式や墓参り、神社での初詣など、宗教的な行動はたくさん存在するものの、宗教的意味を考えている人は少ない。

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