保守とリベラル 欧米での考え方

社会問題
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「保守とリベラル」という思想は国によって大きく異なります。

今回は、欧米で「保守とリベラル」がどのように考えられているかを解説します。

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アメリカにおける保守とリベラル

現在のアメリカ合衆国では、共和党が「保守」、民主党が「リベラル」とされています。

アメリカは、そもそも古典的自由主義(リベラリズム)を重視する国です。

アメリカ独立戦争の際には、パトリック=ヘンリが「自由か死か」の演説を行うなど、「自由」というものを強く求めています。

  • 保守・・・「伝統」を重視し、自由放任主義を望む
  • リベラル・・・「多様性」を重視し、公権力の一定の介入を認める

日本における保守とリベラルの考え方とは反対です。

保守

伝統的価値観を大切にし、州や地区の自治の自由を望み、政府の過度な介入を望まないのが保守です。

「小さな政府」を望み、低い税率、規制緩和、自由な経済活動を推進するものです。

増税による富の分配や「オバマケア」で知られる医療保険制度改革などの社会保障の充実と言った、社会的弱者への支援などは「政府の介入」として保守派は反対します。

これだけ見ると、保守派は「自己責任的な考えが強く、社会的弱者に優しくない」と思ってしまいます。

しかし、保守派の人々の多くはキリスト教であり、「隣人愛」の精神が根底にあります。

保守派にとっての「人助け」は、政府が政策として行うことではなく、地域が集まり、大人も子どもも一緒になって世の中を考えることから始まる。

一律に増税して政府がそれを管理するよりも、諸経費を考えたら、自分たち個人が自由に人助けしたほうが効率もよいというのが、彼らの主張にはある。

リベラル

アメリカにおけるリベラルとは、社会民主主義的な思想であり、人種やジェンダー平等を掲げています。

多様性を認めると共に、国民の自由を守るために、政府が社会・経済に積極的に介入する「大きな政府」を認めるのがリベラルです。

世界恐慌の時代にフランクリン=ローズヴェルトが行ったニューディール政策を始めとし、社会的公正を重視する民主党などの勢力がリベラルを自称したことから現在の意味でのリベラルとなったとされます。

※ニューディール政策は、後にそのほとんどが違憲判決を下された。

欧州における保守とリベラル

そもそも、政治における「保守」という言葉は、「リベラル」に反対する立場として使われ始めた言葉です。

フランス革命に対して、王政復古を求める集団が「保守」とされたのが始まりとされます。

保守

著作『フランス革命の省察』を残したイギリスの政治家エドマンド・パークはフランス革命を否定したことで、保守主義の元祖と言われます。

彼は、国王による専制政治に反対し、アメリカ独立に賛成する、自由を尊重する人物でしたが、一方で、旧来の社会制度や伝統も大切にしました。

その根底には、「人間は不完全な生き物であり、知性や理性も万能ではない」という考えがあり、一見、不合理に見えるような伝統や慣習でも、過去からやってきたものにはそれなりに理屈があると考えました。

バークによると、保守主義とは、

過去に執着する伝統主義や復古主義ではなく、何が自分たちにとって大切なのかを見極め、それを守るためにこそ、必要があれば社会のあり方、政治の仕組みを変えていくもの

なのです。

人間は万能ではないからこそ、過去の積み重ねを無視してはいけない、と考えました。

故に、既存の政治体制を完全に破壊するフランス革命に反対したのです。

リベラル

「リベラル」、「リベラリズム」のような言葉は、すべて「自由」を意味するラテン語の「liber」が語源とされています。

中世から使われ始めた「リベラル」は、ホッブズやジョン・ロック等による「自然権」の考えに基づいて個人の権利や自由を守る「古典的自由主義」が中心となりました。

そして、経済においてはアダム・スミスの提唱する自由放任主義(レッセフェール)に基づいて「小さな政府」が理想とされた。

後に、EUを筆頭に「多様性」を大切にして移民の受け入れにも寛容な精神が育まれていた。

しかし、近年では移民による問題が多発しているため、「リベラル」を自称する者の中にも移民の受け入れに反対する人は珍しくない。

参考

東洋経済オンライン 日本人が知らない米国「保守派」の本当の顔

保守主義を再定義する――起源から辿る「保守」の真髄

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