アメリカでは民主党と共和党、イギリスでは保守党と労働党のように、二大政党制だと保守とリベラルが分かりやすいのですが、日本の政党は保守なのかリベラルなのかよく分からないという人も多いでしょう。
そこで、日本の主要な政党を項目ごとに保守とリベラルに分類していきます。
※投稿者の主観的意見を含むため、必ずしも正確ではありません。
変化する?保守とリベラル
日本の政党に対する「保守」と「リベラル」のイメージは、年代間で大きく異なっている。
読売新聞社と早稲田大学現代政治経済研究所が2017年7月3日〜8月7日に共同で行った調査結果によると、40代以下は自民党と日本維新の会を「リベラル」な政党だと捉えており、共産党や公明党を「保守的」な政党だと捉えているという。
対して、50代以上は、従来のように、自民党や日本維新の会を「保守」と捉え、共産党を「リベラル」だと捉えるなど、大きな「断層」が生じている。特に、若い世代ほど自民党を「リベラル」だと感じる傾向が強く、18〜29歳が唯一民進党(当時)よりも自民党の方を「リベラル」だと見ている。
1955年からの55年体制では、与党の自由民主党が保守、野党の日本社会党が革新という分かりやすい構図として語られることが多いが、現在は「保守」「リベラル」の定義自体が曖昧になっている。
日本の政党分類
日本の主要な政党を様々な観点から保守・リベラルについて考えていきます。
「リベラル」「保守」という言葉の定義は国や時代によって異なるため、今回は以下のように設定します。
リベラル・・・個人の自由や多様性を尊重し、国家や行政による介入を小さくする「小さな政府」を目指す、「権力からの自由」。
保守はリベラルの反対の意味に加えて、伝統を大切にする思想です。
自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党について考えていきます。
自由民主党(自民党)

自由民主党は英語では「Liberal Democratic Party」であり、「Liberal」が入っています。
これは、党結成の際に公募で最多であった「日本保守党」という名前では選挙に不利だということで、自由民主主義を最も端的に象徴する「自由民主党」が党名となったため、党の性質を正確に表しているとは言えない部分があります。
自由民主党 立党宣言・綱領の平成22年(2010年) 綱領を見ると、
「我が党は常に進歩を目指す保守政党である」
「 正しい自由主義と民主制の下に、時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める」
とあり、保守政党ではあるが、自由と改革を求めていることが分かりますが、保守主義と言うのは本来、漸進的な改革を否定するものではないので、「時代に適さぬものを改め」という表現は正に保守的だと言えます。
2.我が党の政策の基本的考えは次による の項目を見ると、
(1) 日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す
(2) 日本の主権は自らの努力により護る。国際社会の現実に即した責務を果たすとともに、一国平和主義的観念論を排す
(3) 自助自立する個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助・公助する仕組を充実する
(4) 自律と秩序ある市場経済を確立する
(5) 地域社会と家族の絆・温かさを再生する
(6) 政府は全ての人に公正な政策や条件づくりに努める
(イ) 法的秩序の維持
(ロ) 外交・安全保障
(ハ) 成長戦略と雇用対策
(ニ) 教育と科学技術・研究開発
(ホ) 環境保全
(へ) 社会保障等のセーフティネット
(7) 将来の納税者の汗の結晶の使用選択権を奪わぬよう、財政の効率化と税制改正により財政を再建する
「新憲法の制定を目指す」と言うのは一見、とてもリベラルな考えだと思いますが、実は違います。
現在の日本国憲法というのは、個人の権利や自由を守るもので(現実に即していないほど)理想的なリベラルであり、これを改正するとなると、余程無茶な改正をしない限り、保守的な改正となります。
憲法改正で代表的な憲法9条に関しては、ここでは割愛します。
しかし、憲法96条の改正は「時代や国民の世論に応じて柔軟に憲法を改正できるようにする」という意味でリベラルな改正と言えるのではないかという疑問も残ります。
また、上記の⑶、⑷を見ると、「自助自立」と「共助・公助」、「自律」と「秩序」などの両面を重視していることから、「中道」と言えるのではないかとも考えられる。
一方、⑸は日本の伝統的価値観を守ろうという典型的な「保守」の考えです。
更に、「年齢、性別にかかわらず誰もがその能力を発揮できる時代を築く」というのは、多様性を認めるリベラルな思考ではないでしょうか。
このように、自由民主党(自民党)は一部だけを見ても、「保守」「リベラル」「中道」が混在するため、一概には言えません。
ですが、現実に即した最低限の改革を行う保守という一面が最も強調されていると思います。
公明党

自民党と連立政権を組んでいる公明党ですが、自民党と同じ思想というわけではない。
公明党の理念・政策を見ると、
- 子育て・教育支援
- 平和主義
- 大衆福祉の実現
- 小さな声を、聴く力
- 原発ゼロの社会へ
となっており、福祉を充実させる「大きな政府」的な考えが多いため、保守と言えるでしょう。
また、公明党の重点政策によると、
- 働き方改革
- 中小企業への支援
- 地方創生、地域活性化
など、経済活動にも政府が積極的に介入する姿勢が見られます。
また、「安定した平和と繁栄の対外関係」の項目には、日米同盟の強化や周辺諸国との関係強化などが記されており、現政権による積極的な外交政策を支持しているようだ。
憲法改正については、現在の日本国憲法を高く評価しながらも、新たな条文を付け加える「加憲」の立場です。
公明党は全体的に保守的な政党であると言えるでしょう。
立憲民主党

立憲民主党は自民党の反対勢力と捉えられることが多いため、リベラルな政党と思われがちです。
立憲民主党について 綱領を見ると、
私たちは、「自由」と「多様性」を尊重し、支え合い、人間が基軸となる「共生社会」を創り、「国際協調」をめざし、「未来への責任」を果たすこと、を基本理念とします。
となっており、自由と多様性を尊重する点で、リベラルだと言えます。
また、「私たちのめざすもの」を見ると、
私たちは、立憲主義を守り、象徴天皇制のもと、日本国憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を堅持します。
私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。
となっており、現在のリベラルな日本国憲法を尊重し、改正には慎重な姿勢のようです。
人権の尊重や多様性を認め合うというリベラルな考えがある一方で、「過度な自己責任論に陥らず、公正な配分により格差を解消し、一人ひとりが幸福を実感できる社会を確立します。」のように、政府が積極的に国民に介入していく「大きな政府」的な考えも持っています。
更に、持続可能で安心できる社会保障制度の確立など、政府による支援にも積極的です。この点では、保守的だと言えるでしょう。
しかし、「実効性のある公文書管理と情報公開を徹底し、透明で公正な信頼される政府の実現」を目指すのは、正に「権力からの自由」というリベラルな思考です。
まとめると、全体的にリベラルな考え方が多いが、一部保守的な思想も存在する。
国民民主党

現在の国民民主党は、旧国民民主党の国会議員で新・立憲民主党の結党に参加しなかった議員により設立されたため、立憲民主党と基本的理念は似ていますが、政策などでは違いも多いです。
国民民主党の理念と政策の方向性によると、
私たちは、多様な価値観を寛容に受け入れる政治姿勢をとります。よって、リベラル・保守といった単純な二項対立や、特定の主義主張に拘泥するのではなく、国や国民が直面している諸問題に対して現実的に向き合う「改革中道政党」として、具体的な解決策を示します。私たちが重視するのは、「対決」ではなく「解決」です。常に、客観的事実の追求と建設的な解決策の提案を行っていきます。特に、国民の生活に直結する社会保障政策や経済政策に最大限の力を入れます。私たちは、社会保障と経済に強い新党を目指します。
基本理念には、「穏健保守からリベラルまでを包摂する国民が主役の改革中道政党を創ります。」と書かれています。
実際に、保守とリベラルが共存する現実的な中道の政策を掲げています。
格差是正のために、政府の再分配機能を重視した政策を採用し、個人の自己責任に全てを押しつけないという「大きな政府」的な政策や、「過去に対する敬意」を大切にし、地方を存在を重視する姿勢は保守的と言えます。
一方で、イノベーションを推し進めるために投資を促す大胆な規制緩和や減税・非課税策を講じ、外国人労働力の受け入れを検討し、2030年代原発ゼロをめざし、あらゆる政策資源を投入するなど、リベラルな政策も多いです。
安全保障に関しては、現実的平和主義を掲げ、「近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」との考え方を受け継いでいます。
まとめると、国民民主党が掲げている通り、現実的な政策の多い中道政党であると言えるでしょう。
日本維新の会

おおさか維新の会から始まった日本維新の会は、現在も大阪が中心の政党ですが、国政では自公政権に対して是々非々の姿勢で臨む「ゆ党」(野党と与党の中間という意味)と呼ばれることもある。
日本維新の会 綱領・基本方針によると、
政治理念は「自立する個人、自立する地域、自立する国家を実現する。」であり、政府の過剰な関与を見直して、小さな行政機構に行政機構を目指していることは、正にリベラルな思考である。
更に、「従来の中央集権と東京一極集中を打破し、将来の多極化(道州制)を実現する。」という方針も、保守であるとは言い難い。(リベラルと言うのかも不明だが)
また、議員自身の身を切る改革や行政改革、規制改革など、「小さな政府」を目指す改革を多く掲げていることからも、リベラルな政策が多いことが分かる。
憲法改正に関しては、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置という3点に絞り込み憲法改正原案を取りまとめており、改正に積極的な姿勢である。
教育無償化や働き方・社会保障改革など、保守的な政策も打ち出しています。
まとめると、保守的な政策もありつつも、全体的に改革を推し進めるリベラルな政党と言えるでしょう。
日本共産党

「共産主義の社会を目指す共産主義の社会を目指す日本共産党が保守なわけがない」と言うのが、一般的な認識でしょうか。
日本共産党綱領は、他の政党の綱領とは大きく異なっています。
戦前の天皇制という専制政治や帝国主義を批判し、戦後アメリカへの事実上の従属国の立場になったことを批判し、レーニンの社会主義を称賛し、「社会主義」看板を掲げながら専制政治を行ったスターリンなどを批判し、アメリカ帝国主義を批判している。
日本共産党は、核兵器のない世界、軍事同盟のない世界を実現するための国際的連帯を、世界に広げるために力をつくす。
現在の世界を批判し、社会主義、共産主義を目指すことが基本方針のようです。
具体的には、以下の通りです。
- 日米安保条約の破棄し、いかなる軍事同盟にも参加せず、すべての国と友好関係を結ぶ平和・中立・非同盟の道を進み、非同盟諸国会議に参加する。
- 自衛隊は規模を縮小し、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。
- 戦争、テロに反対し、平和外交を展開する。
- 現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす。
- 主権在民、基本的人権の尊重、ジェンダー平等、信教の自由、平和の精神などに沿って改革を進める。
- 天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである。
- 労働問題に取り組み、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる。
- 大企業にたいする民主的規制、食料自給率の向上、安全・安心な食料の確保、農業を基幹的な生産部門として位置づける。
- 原子力発電所の廃止、早期に「温室効果ガス排出量実質ゼロ」の実現、再生可能エネルギーへの抜本的転換をはかる。
- 国民各層の生活を支える基本的制度として、社会保障制度の総合的な充実と確立をはかる。
- すべての国ぐにとの平等・互恵の経済関係を促進し、南北問題や地球環境問題など、世界的規模の問題の解決への積極的な貢献をはかる。
- 日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる。
- 主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化(私有財産は保障される。)
- さまざまな思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される。
- 「社会主義」の名のもとに、特定の政党に「指導」政党としての特権を与えたり、特定の世界観を「国定の哲学」と意義づけたりすることは、日本における社会主義の道とは無縁であり、きびしくしりぞけられる。
- 社会主義・共産主義の社会がさらに高度な発展をとげ、搾取や抑圧を知らない世代が多数を占めるようになったとき、原則としていっさいの強制のない、国家権力そのものが不必要になる社会、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会への本格的な展望が開かれる。
社会主義・共産主義の社会を目指しているので、リベラルとなります。
全体的に理想論が多く、非現実的な政策が多いと思います。本当に全世界で社会主義・共産主義が実現するためには、原始的な生活に戻る以外に方法が無いのではと思ってしまいます。
参考
コメント