カントの名言 認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従うのだ 

名言
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今回は、イマヌエル・カントの名言「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従うのだ」について解説していきます。

意味

まず、ここで言う「認識」とは主観であり、「対象」とは客観のことです。

だから、言い換えると、「主観が客観に従うのではなく、客観が主観に従うのだ」となります。
現在でも、「主観は客観を基にしている」と考える人は少なくないでしょう。

しかし、カントによると、実際は逆なのです。

彼は、「対象(客観)が認識(主観)の形式に一致するように構成される」と説きました。

これは、従来の哲学からの大転換でした。

天動説を否定し、地動説を主張したコペルニクスに例えて、コペルニクス的転回と呼ばれます・

先天的な知識

カントは、ヒュームの懐疑論を肯定しましたが、「全ての知識は知覚による経験に由来する」という経験論の考えは否定しました。

逆に、プラトンやデカルトと同様に知識は先天的なものだと考えました。

その理由について、カントは以下のように説明しています。

仮に、先天的な知識が存在しないならば、異なる地域、文化圏で生まれ育った人が共通の知識を有している理由を説明できない

実際、カントのこの考えは現代科学においても概ね正しいと考えられています。

近年の研究では、言語や知識を習得していない赤ちゃんにも、先天的な知識が備わっていることが明らかになっています。

例えば、3次元空間の認識能力は先天的な知識だと考えられています。

先天的な知識は正しい?

しかし、「先天的な知識は本当に正しいのだろうか?」と疑問に思う人もいるでしょう。

カントは、プラトンやデカルトとは反対に、「正しいとは限らない」と考えました。

なぜなら、「先天的な知識が正しいと証明できる合理的な根拠が何もない」からだと考えました。

例えば、ヒュームが「知覚の習慣に過ぎない」とした因果について、カントは先天的な知識と認めていましたが、「必ずしも世界の真相ではない」としました。
これは、現代科学でも同様の見解を示しています。

アインシュタインの相対性理論によると世界は実は4次元なので、人間が先天的に備えているとされる3次元の認識能力も間違っています。

そこで、カントは「人間には世界を認識する形式が先天的に備わっている」と考えました。
因果の知識や時間、三次元空間などもその形式に含まれるとしました。

本当の世界を知ることはできない

「人間には世界を認識する形式が先天的に備わっている」とすると、驚くべき真実が見えてきます。

私たちは、実は本当の世界を認識しているわけではなく、本当の世界のあらゆる情報を人間の持つ認識形式に当てはめることで、世界を理解しているのです。

要するに、

私たちが知っているこの世界は、先天的な認識形式を通して形作られた世界であって、本当の世界の姿ではないのです。

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