知性的徳と習性的徳
アリストテレスは徳を、知性的徳と習性的徳に分けました。
知性的徳には、以下のようなものがあります。
- 真理の純粋な観想(テオリア)
- 必然的な原理から推論・論証する学問(エピステーメー)
- 原理を直感的に把握する知性(ヌース)
- 物事の原因や原理を探求する知恵(ソフィア)
- 行動の適切さを判断する思慮(フロネーシス)
- 制作にかかわる技術(テクネー)
テクネーは、テクニックの語源となっています。
観想(テオリア)
観想・・・実用的な日常を離れ、真理を純粋に考察すること。
観想(テオリア)はセオリー(theory)の語源です。
アリストテレスによれば、「何か他の目的のための手段としての知よりも、知ることそのものを目的として、求める知の方が、高貴で人間にふさわしい」と考えた。
故に、理性を働かせて真理を考察する観想(テオリア)こそが人生における最高の活動である。
知恵は、物事の原因を求めるものであるから、宇宙の万物を動かし、万物の運動の原因である永遠不動の神を観想する観想的生活こそが、人間にとっての最高の幸福とされます。
知恵(ソフィア)
知恵・・・学問と直感をあわせもち、物事の原因や原理を求めること
アリストテレスは、自然界の全ての事物は一定の目的によって存在しているとする目的論的自然観を説きました。
アリストテレスによると、自然の事物は形相(エイドス)を実現し、完成態となることを目的として生成する。
思慮(フロネーシス)
思慮・・・善悪を分別し、行動や態度の適切さを判断する実践的な能力。
思慮は、日常の具体的な状況において、行動や感情の中庸を判断し、適切な行動を導く能力である。
観想(テオリア)を最高の活動とするアリストテレス哲学では、実践的な思慮は、真理に関わる学問(エピステーメー)や知性(ヌース)などに比べると、重視されない。
コメント