今回は、近代の哲学者ショーペンハウアーについて解説していきます。
人物像
ショーペンハウアー・・・1788年~1860年のドイツに生きた哲学者であり、大学で自然科学・歴史・哲学を学び、インド哲学も研究した人物。ニーチェやワーグナーに影響を与えたとされる。
ショーペンハウアーは、ベルリン大学の私講師(無給で講義をする講師)となりましたが、当時の哲学の主流であったヘーゲルの人気に圧倒され、大学を辞任しました。
理性主義の哲学に反対して、生存への意思を中心にする「生の哲学」を説きました。
盲目的意思
盲目的意思・・・世界の様々な現象の根底にある、盲目的な生存意思
ショーペンハウアーによると、全ての個体は、根底にある生存への盲目的意思のあらわれであり、本来同一のものである。
人間は、芸術によって欲望を昇華させるか、他者への同情によって自他の対立を脱し、万物が一体となることで、喜びを感じられる。
しかし、人間は盲目的意思に常に駆り立てられるため、人間の生への意思は際限ないものであり、人生は苦痛なものでしかあり得ない。
つまり、人間は生きている限り、絶対に苦痛からは逃れられないのである。
ペシミズム
「人生は苦痛に満ちている」という考えはペシミズムへと繋がります。
ペシミズム・・・物事を常に最悪の状態であるかのように捉える態度のこと。「厭世主義」「悲観主義」などと訳される。
「ペシミズム」は、ラテン語で「最悪のもの」を意味する言葉に由来します。
古代ギリシアは正にペシミズムが蔓延しており、ギリシア神話において、酒の神ディオニュソスの教育係であったとされるシレノスがその象徴とされます。
「人間にとって最善のことは何か」とミダス王から問われると、シレノスは「それはお前にとってまったく手の届かないことだ。それは、生まれないこと、存在しないこと、無であることだ。お前にとって次善のことは早く死ぬことだ」と言い放ちました。
このように、「生への意思」(盲目的意思)を否定することが、苦痛に満ちた人生から解放される究極の方法であると考えるのが、ペシミズムです。
ここで注意しなければならないのは、「生への意思」の否定=自殺ではないということだ。
「生への意思」というのは、無限に溢れる欲望の源泉であるため、「禁欲」こそが苦悩からの完全な解放を可能にする、とショーペンハウアーは語ります。
この「生への意思」(盲目的意思)の哲学は、ニーチェに受け継がれ、「力への意思」として積極的に展開されていきます。
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