今回は、古代ギリシアの哲学者アリストテレスについて解説していきます。
アリストテレスとは?
アリストテレス・・・古代ギリシアの哲学者の一人でプラトンの弟子であり、万学の祖と呼ばれ、現実主義の哲学を説いた人物。
彼は、哲学だけでなく、天文学・生物学・政治学・倫理学・論理学・詩学・形而上学など、あらゆる学問の基礎を確立しました。
形相(エイドス)と質料(ヒュレー)
形相(エイドス)・・・事物に内在し、それが「何であるか」を規定する本質。プラトンの提唱するイデアと似ているが、イデアは個物を超越したものであるのに対して、エイドスは個物に内在する本質としました。
質料(ヒュレー)・・・素材という意味で、エイドスと結合して個物をつくるもの。
例えば、家屋の場合を考えてみます。
質料(ヒュレー)は木材や石材、コンクリートなどです。
しかし、木や石だけが無秩序に並んでいるだけでは、家とは言えません。
そこで、これらの素材を骨組みや、床、壁などに形を決めることによって、ただの質料(ヒュレー)が、現実態(完成した家)になるのです。
つまり、家屋における形相(エイドス)とは、家の構造や設計など、「家をどのような形にするか」という抽象的なものです。
現実態と可能態
現実態・・・物事に可能性として潜む素質が実現された完成態、能力が実際に活動している現実態のこと。
可能態・・・質料(ヒュレー)の中に形相(エイドス)が可能性として含まれた、まだ規定されていない状態のこと。
個物の生成は形相(エイドス)が質料(ヒュレー)を限定しながら姿を現し、可能態から現実態へと移行して、自らの形相を実現していく過程です。

中庸
中庸・・・欲求や感情においては、過度や不足の両極端を避けて、適切な中間を選択するべきという考えです。
ここで言う「中間」は、過大と過少の平均(真ん中)という意味ではなく、それぞれの状況に最も適していると考えられる適切さです。
だから、「中庸」という名称ですが、どちらかに多少偏っていることも多いです。
中庸の具体例
アリストテレスが述べた中庸の例をいくつか紹介します。
不足 | 中庸 | 過剰 |
臆病 | 勇敢 | 無謀 |
卑屈 | 矜持 | 傲慢 |
卑下 | 正直 | 虚飾 |
無愛想 | 親愛 | 機嫌取り |
上記の具体例を見ると、中庸が不足と過剰の平均ではないことが分かると思います。
幸福
アリストテレスによると、幸福は究極の最高善です。
徳をそなえた魂の活動に人間の善が存在し、それこそが幸福なのです。
幸福は、善く生きることの現実態において実現するものであり、特に真理を純粋に考察する観想(テオリア)的生活こそが、人間にとっての最高の幸福であるとしました。
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