今回は、古代ギリシアの哲学者プラトンの理性やイデアについて解説していきます。
政治や国家についてのプラトンの思想を知りたい方はこちら
プラトンとは?
プラトンは
ソクラテスの弟子であり、古代ギリシアの哲学者
であり、『対話篇』という著作でソクラテスとの対話を紹介し、ソクラテスの言葉を借りて自身の哲学的思想を表現しました。
プラトンは何よりも理性を大切にし、人生においても、国家においても、「理性なくしては素晴らしいものにならない」と考えました。
また、プラトンの理性を最も重要なものとする考えは、デカルトやカントなど、後世の著名な哲学者たちに受け継がれています。
理性について
そもそも、理性とは一体何でしょうか?
辞書で「理性」を調べると、
本能や感情に支配されず、道理に基づいて思考し判断する能力。
明鏡国語辞典
となっており、少し分かりにくいかもしれません。
よく理性の働く例とされるのが、無人の道端にお金が落ちている時です。
周囲には明らかに人がいないため、多くの人は落ちているお金をネコババするかどうか迷うでしょう。
しかし、そういう時に自分の中の理性が現れて「他人のものを盗んではいけない」と言います。
- 法律違反の可能性があるから
- 道徳に反するから
- お金を落とした人が可哀想だから
等、理由は人それぞれでしょうが、このような理性の働きによって、自らの欲望に逆らった行動を取ることができます。
イデア論
イデアは元々は、「見られるもの」という意味で、物の外見や形、姿のことでした。
しかし、プラトンは「イデア」という言葉に、
理性によって認識できる、全ての物事の原型・模型となる永遠不変の真の実在
という意味を与えました。
プラトンは、感覚で捉えられる個々の事物はイデアの不完全な模造のようなものであり、イデアが無ければ何も存在しないとするイデア論を説きました。
善のイデア
善のイデアとは、
全ての善を善たらしめている究極の善の理想
のことです。
善のイデアは、個々のイデアの頂点に立つ最高のイデアで、全てのイデアに善という性質を与える究極の理想のイデアです。
つまり、私たちが感覚的に捉えている事物の存在を保障する個々のイデアの善性を担保する全てのイデアの根源となるのが善のイデアです。
そのような意味で、善のイデアは「イデアのイデア」とも呼ばれます。

イデア界と現象界
プラトンは、世界を感覚的な現象界と知性が捉える理性的なイデア界とに分ける、二元論的世界観を説きました。
イデア界とは、
理性によって捉えられる完全で、永遠不変の実在であるイデアの世界
であり、英知界とも呼ばれます。
また、現象界とは、
見たり聞いたりする人間の感覚によって捉えられる現実の世界であり、絶えず変化・生滅する不完全な世界
のことです。
そして、絶えず変化する現象界は、不変のイデア界を原型・模倣とし、それを模倣することで存在が確立しています。
魂の三分説
プラトンは、人間の魂を理性・欲望・気概の3つの機能に分けることができると考えました。
- 理性・・・魂を指導するもの
- 欲望・・・本能的で盲目的なもの
- 気概・・・理性と欲望のどちらかに従うもの
「気概は理性か欲望に従属しているだけだから、実は2つに分けられるのではないか」と考えますが、プラトンは、著書『国家』において「(気概は)第三のものとして区別されなければならない」と述べています。
「気概」というのは抽象的な概念ですが、「意思」と訳されることもあります。
そして、「意思」(気概)は理性または欲望と深い関係があります。
「美味しい物を食べたい」という欲望から、「高級レストランへ行こう」という意思につながることもあれば、「正義に基づいて行動するべき」という理性から、「弱者を助けよう」という意思につながることもあります。
つまり、気概は単独では存在せず、理性または欲望の魂と結合しているのです。
四元徳
四元徳とは、
古代ギリシアで大切なものと考えられていた知恵・勇気・節制・正義の4つの基本的な徳
のことであり、プラトンはこの四元徳を魂の三分説に対応させました。
- 知恵・・・善のイデアを認識する理性の徳
- 勇気・・・理性に従って行動する気概の徳
- 節制・・・欲望に節度を設け、適切なあり方に制御する徳
・正義・・・知恵・勇気・節制の3つの徳に理性を中心とした支配と従属の関係が成立し、魂全体が秩序と調和のとれた状態になる徳
プラトンは、魂の各部分(理性・欲望・気概)が固有の徳に基づいて働き、各部分が互いの役割を侵さず、全体として調和するような魂の正しいあり方こそが正義であると考えました。
このプラトンの考えには、宇宙や人間の理性的な秩序や調和を大切にする古代ギリシアの思想が反映されています。
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